時制の一致を理解しよう

「~って言ってたよ」と英語で言ってみよう

「A君が~って言ってたよ」や「私、思ったんだけど~」のように、誰かが言った内容を伝える、自分の思っている事を伝える事は、日常会話では頻繁にあります。 英語での会話にも欠かせません。 ただ、「~って言ってたよ」という言い回しを使うときには、日本人の感覚とはちょっと違う、ある重要な決まりがあるんです。 まず、例文を見てみていきましょう。 想像してください。例えば、こんな場面です。

「OLなつみ」が、「同僚さち子」と、「イケメン先輩」の話題で盛り上がってます。 そこで「同僚さち子」が、「OLなつみ」に向かって一言。

The other day he said that you were very attractive.
『「イケメン先輩」が「OLなつみ」のことをとても魅力的な女性って言ってたよ』
(the other day=この前、先日、attractive=美しく魅力的)

ここであなたが「OLなつみ」だったら、どう思いますか?

「とても魅力的だったって事は、今の私は魅力的じゃないって事?ガーーーン!最近、ふけたのかしら?」

なんてショックを受けた方、大丈夫、安心してください。 「イケメン先輩」は、「なつみはとても魅力的だ」と言ったんです。 「イケメン先輩」は、今、魅力的だと思ってるんですよ。

じゃあ、なんで、「you were」と過去形にしたのかって話ですよね。 それは・・・

時制の一致の基本

実は、【時制の一致】という法則が働いていたんです。 さぁ、ここからが本番、【時制の一致】の説明になります。

実は、「イケメン先輩」が先日、「同僚さち子」に言ったのは、こんなセリフだったはずです。

Natsumi is very attractive. (←「実際こんな事言うかいな?」って話は置いときましょう)

それを、「同僚さち」子が、「この前~って言ってたよ」と、間接的に「OLなつみ」に伝えました。 すると、【時制の一致】が起こって、言ってた内容も過去形になってしまうんです。 これを、きちんと説明すると、以下のようになります。

「主節の動詞が過去、あるいは過去完了の時制だった場合、【時制の一致】が適応され、従属節も過去形、過去完了形に変わる。(進行形もそれに準ずる)」

わぁ、こんなん言われてもピンときませんね。 でも、順を追って説明していきますので安心してください。

それでは、もう一度、上の例文を見てみましょう。
He said that you were very attractive. (「The other day」は省略しておきます)

「He said that(彼は言った)」が主節になります。 「you were very attractive.(あなた(なつみ)は魅力的だ)」が従属節です。

従属節は、主節の時制に合わせるというのが「時制の一致」です。 従って、従属節「you are~」は現在形ではなく、「you were~」と過去形にします。

ただ、従属節を過去形にしても、日本語の感覚で、「あなたはかつて魅力的だった(過去)と、彼は言った」と訳してはいけません。

じゃぁ、本当に「あなたはかつて魅力的だった(過去)」というには、どうすればいいのでしょうか。

まず、「イケメン先輩」が言ったセリフは、こうなりますね。
Natsumi was very attractive.

これを「さち子」が「なつみ」に伝えると、こんな風になります。
He said that you had been attractive.

従属節の動詞が、過去形から、過去完了形になりました。 こうなると明確に、「イケメン先輩」が「なつみはかつて魅力的だった」と言ったことになります。 (今は、どうなんでしょうかねぇ……、激太りでもしたかな?)

【時制の一致】をさらに深めよう。

さて、「同僚さち子」が「なつみ」に言ったセリフをもう一度、見てみましょう。
The other day he said that you were very attractive.
(こないだね~、彼、あなたの事すごく魅力的だって言ってたよ)

このとき、「なつみ」は何と応えればいいのでしょうか?
I know that he said so.
(彼(イケメン先輩)がそう言ったのは、知ってるわ。)

はい、ここで注目してください。 主節(I know that)と、従属節(he said so)の時制が違います。

「時制の一致」は、主節の動詞が過去、あるいは過去完了形の場合に起こるので上の例文のように、主節の動詞(know)が現在形の場合は、「時制の一致」に従わなくてもいいんです。 他にも、主節の動詞が現在完了や未来形のときも「時制の一致」は適用されません。

あるいは、「なつみ」はこんな風に応えたかもしれません。
I knew that he had said so.
(彼(イケメン先輩)がそう言ったのは、知ってたわ。)

風のうわさで聞いたんでしょうか。 彼(イケメン先輩)が「言った」のはなつみが「知った」ときより前なので、過去完了形になります。

ただ、もし、以下のように言ったとするとだいぶニュアンスが変わってきます
I knew that he said so.
(彼がそう言う事は、知ってたわ)

「同僚さち子」が彼と会ったとき、「彼がそう言うのを知っていた」というニュアンスになってしまいます。(なんだか意味深ですねぇ)

このように、【時制の一致】を理解しておかないと、話が変わってしまいますから、注意してください。

もう少し、「OLなつみ」の別の応えを見ていきましょう。
I knew that he had been saying so.

従属節が、過去完了進行形になっている事に注目してください。 こうなると、「最近、彼がそう言ってることを、知っていたわ」という意味になります。

「同僚さち子」に言った以外にも、いろんなところで言ってたんですね~。 遠巻きなアピールってことでしょうか。 「OLなつみ」は、「さち子」に言われる前から、知ってたんです。 ただこの文には、もう一つの意味の可能性があります。

「彼が、ある時点までそう言っていたのを、知っていた」という意味になる可能性もあるのです。 どういう事か、少し詳しくみていきますね。

「時制の一致」が適応されると、従属節の動詞は下のように変化します。
「現在形」→「過去形」
「現在進行形」→「過去進行形」
「過去形」→「過去完了形」
「過去進行形」→「過去完了進行形」
「現在完了形」→「過去完了形」
「過去完了進行形」→「過去完了進行形」

こんなのを見ると頭がグルグルしてきますが、「過去進行形」と「過去完了進行形」のところだけに注目してください! どちらも「時制の一致」が適応されると過去完了進行形になります。(なぜって、それ以上過去を表す表現がないから)

従って、なつみが知っていた内容(従属節のところ)を「時制の一致」が起きる前の時制で考えると、「過去進行形」と「過去完了進行形」の2つの意味の可能性があるということです。。

He has been saying so.
(彼はこのところ、そう言い続けている)「過去進行形」

He had been saying so.
(彼は以前のあるときまで、そう言い続けていた)「過去完了進行形」

ただ、以前のあるときまで(「過去完了進行形」)だったら、「以前のあるとき」を明示するのが普通です。 従って、通常は、「過去進行形」が時制の一致で「過去完了進行形」になったと解釈するのが自然でしょう。 あとはもう、文脈で判断するしかありません。

まとめ

最後にもう一度、「時制の一致」の法則をおさらいしましょう。

【時制の一致】が起こるのは → 主節の動詞が過去、あるいは過去完了の時制のとき。(現在形、現在完了形、未来形では関係なし)
【従属節の動詞の変化】→ 過去形、過去完了形に変わる。(進行形もそれに準ずる)

日本語の感覚と違うので、慣れないとややこしいかもしれません。 でも、日常会話で、「I thought that~(私、思ったんだけどぉ)」とか、「She said that~(あの子が~って言ってたよ)」みたいなのの連続です。

「【時制の一致】なしに、日常会話なし」くらいの気持ちで、マスターしてください。 ここまでで、時制の一致の基礎についてお話しましたが、実は例外もあります。

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例外について

「時制の一致」の例外

英語の文では、主節の動詞が過去形なら、従属節の動詞もつられて過去形(過去完了形)になるという、【時制の一致】というきまりがあります。 まずは、さらりとおさらいしましょう。

The other day he said that you were very attractive.
主節の動詞は「said」、従属節の動詞は「were」です。

従属節の動詞が、過去形になっているからといって、「彼女は魅力的だった」と過去の事を語っているのではなく、「彼女は魅力的だ」と言っているのです。 このように、主節の動詞が過去形だった場合、その時制につられて、従属節の動詞も過去形(過去完了形)になります。

ただ、【時制の一致】が適応されない例もあります。

普遍の真理
過去も現在もそして未来も変わりなく続くであろう普遍の真理には、時制の一致が適応されず、通常は現在形が使われます。

Our teacher taught us that the biggest planet is Jupiter in the solar system.
(先生は、木星が太陽系で最大の惑星だと教えてくれた)

主節の動詞「taught」が過去形になっていますが、従属節の動詞は現在形「is」のままになっている事に注目してくださいね。 これは、「木星が太陽系の中で最大の惑星」は、一般的に普遍の真理だからです。

同様に、格言やことわざも時制の一致が適応されません。

Nelson Mandela said that it always seems impossible until it’s done.
(ネルソン・マンデラは言った。何事も成功するまでは不可能に思えるものだと)

南アフリカで、反アパルトヘイト運動を率いた英雄、マンデラ元大統領の名言です。 このような格言も、変わらぬ真理のように扱われるんです。

歴史上の事実を表すときは過去形

My grandfather said that Neil Armstrong was the first person who walked on the moon.
(月面を始めて歩いた人はネイル・アームストロングだと、おじいちゃんが言ってたよ)

このように、歴史上の事実を表すときは、従属節を過去完了形にする必要はありません。

従属節が仮定法

My son said he would buy me a mansion if he had 1million yen.
(うちの息子がね、もし100万円あったら、おっきなおうちを買ってあげるのになぁっていってくれたの)
(mansion=日本のマンションじゃありませんよ。豪邸の事です。)

仮定法はそのものが、時系列通りの形じゃないので、そのまんまでOKです。 ちなみに、100万あったって豪邸買えませんけどね。子どもってたまにそういう事言ってくれるんですよ。

過去形のない助動詞

従属節に助動詞が来た場合も、基本的には時制の一致は適応されます。
She told me that she might be a bit late.
(彼女、ちょっと遅れるかもしれないと言ってたよ)

助動詞「may」が「might」と過去形になってますね。 このように「will」「may」「can」は、過去形があるので原則通り。

ただ、大過去の場合(従属節の内容が、主節の動詞(過去)よりも前だった場合)、本来、過去完了形にするのですが、助動詞に過去完了形はないので、過去形のままでかまいません。

さて、「must」「should」は元々過去形がありません。 これは、どうしましょう? ないものはしょうがないんです。 時制の一致は適応されず、現在形のままでOKです。 大過去も、現在形でOK。

また、過去の習慣を表す「used to」、「~すべきだ」「~のはずだ」と義務を表現する「ought to」も過去形がないので、時制の一致は適応されません。過去完了形のような形にする必要もありません。

My father boasted he used to eat 5 bowl of rice for breakfast every day.
(うちの父ちゃん、かつては朝からどんぶり飯5杯食べたもんだと自慢してたよ)

現在の事実や習慣を表すとき

さて、ここからが、今回の肝です。 これまでは、単なる暗記事項。 「そういうもんなんだなぁ」と覚えておけば問題ありません。 でも、ここからはちょっと違います。 まずは、この例文を見てください。

Tom said he still loved you.
「トムは、まだあなたを愛していると言っていた」という文です。

基本に従って、時制の一致が適応されていますね。 この文が述べているのは、トムが発言をしたとき、「まだ彼女を愛していた」という事実です。 今はどうだか分かりません。

もしかしたら、80歳を超えたおばあちゃん同士が、学生時代の思い出話に花を咲かせ、「そうそう、あのときトムったらね~、まだあなたを愛してるなんて、未練がましく言ってたのよ~」という文脈かもしれません。 さらに、もう一つの例文も見てみましょう。

Tom said he still loves you.
(トムはまだ、あなたを愛してるって言ったわよ)

前出の文と比べてください。 従属節内の動詞「love」が、現在形で使われています。 【時制の一致】の原則が守られていません。 間違えたわけじゃないんですよ。 これは、意図して現在形にしているんです。 それは、話し手の「現在もそうだ」という「強い思い」から、あえて現在形にしているのです。

だから、「今ならもう一度、やり直せるわ」かもしれないし、「ストーカーになるかもしれないから気をつけて」かもしれませんが、話し手は、「あなた」に対して、今、何かの反応や行動をした方がいいという気持ちを表現しているのです。

つまり【時制の一致】が守られず、現在形が使われているときは、「今もそうだ」という話し手の思いを伝えたいということです。 この感覚を、頭に入れておくと、ネイティブとの会話で相手の思いをより深く理解できるはずです。 【時制の一致】の例外はここまでです。

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