「no」と「not」の違いを理解しよう

まずは以下の例文を見て下さい。

財布には1万円しかない。
財布に、1万円もある!
財布に入ってるのは、多くて1万円だ。
財布には、少なくとも1万円はある。

どの例文も似たり寄ったりですね。 でも、言ってる本人の気持ちは、全然違います。 このニュアンスの違いが、英語でも微妙な違いとなって出てくるんです。 その微妙な違いは「no more than」と「not more than」「no less than」と「not less than」で表現します。

上の4つの例文には、上のどの英語表現を使うのか分かりますか? 今、分からなくても大丈夫。 ちゃんと理屈を理解できれば、もう迷う事はありません。 では、さっそく見ていきましょう。

「no more than」は「足りない、及ばない気持ち」

まずは、「財布には1万円しかない」から見ていきましょう。

The wallet has no more than 10,000 yen.

この文を直訳すると「財布には1万円よりも、ほんのわずかでさえ多く入ってない」となります。

この文には「1万円より(ちょっとでもいいから)多く入っていればいいのに……」という期待が隠されています。 つまり「1万円しか入ってなくて、がっかりしてるんです。」

そのため、「no more than」は「たった~」とか「~に過ぎない」という意味を表します。 「欠乏感」というか、「満足できない気持ち」です。

こんなふうにも使います。

What might she do then? She was no more than a little girl.
(そのとき、彼女に何ができたであろうか?彼女はちっぽけな女の子に過ぎないというのに)

尚、「no more than」は、一言で言うと、「only」と同意義ですが、もっと感情のこもった表現になります。

「no less than」は「ほくほくした気持ち」

では、「no more than」の反対の「no less than」を見てみましょう。

The wallet has no less than 10.000 yen.

この例文は「財布に、1万円もある」という、満たされた気持ちを表します。

本人の予測としては「1万円よりも少ないだろうな~」。 ところが、財布の中は「1万円より、1円も少なくない!」 「やった~、やった~」って感じでしょうか。

なので「no less than」は「~も」と、数や量の大きさを強調するときに使われます。

尚、数や量だけでなく、「まさに~だ!」と物事を強調するときにも使われます。

Look at the smile! She is no less than an angel.
(あの微笑みを見てよ!彼女はまさに天使だ)

「天使より少しも劣らない」=「天使と同様」=「まさに天使だ」となります。とても感情のこもった表現です。

ぜひあなたの好きな人を当てはめて、覚えてみて下さい。絶対忘れないから!

【混同注意!】「not more than」は「せいぜい」「多くても」

さて、ここからややこしいのがでてきます。

先ほど見た、「no more than」にそっくりの「not more than」。

これは、そのまま「~より多くない」って事で、「せいぜい」とか「多くても」という意味を表します。 先ほど見た、「お財布と1万円」の例文で見てみましょう。

The wallet has not more than 10,000 yen.
(財布に入ってるのは、多くて1万円だ)

「1万円より多くない」=「多くても1万円」です。

「not more than」は、単なる事実を述べているだけです。

「no more than」は、本人の気持ち、感情がたっぷり入った表現です。

それでは、さらに、この違いについて詳しく見ていきましょう。

理解の鍵は「no」と「not」の違い

「no more than」と「not more than」違いは、「no」と「not」です。(←はい、見りゃ分かりますね)

この二つの違いが理解できれば、上の構文も「どっちがどっちだっけ?」なんて事にはならなくなるでしょう。

では、その違いは何かと言うと・・・

「no」は、be動詞の補語として、または形容詞の前につけられると、「not」より強い否定を表します。

「no」は単なる否定というよりは、むしろ「その反対だよ!」って気持ちなんです。 以下の例文を見てください。

He is not poor.

この例文は「彼は貧しくない」という意味で、それ以上でもそれ以下でもありません。 「貧しいとまでは言えないけど、もしかしたら、まぁ、かつかつかもしれない。」って感じです。

それでは以下の例文はどうでしょうか?

He is no poor.

この例文の意味は、「彼はぜんっぜん、貧しくなんかないよ」となり、むしろ「実は金持ってんだよ」という思いが隠されています。

ですから、「not more than」は、単に「~より多くない」という事実を述べるだけなのです。

一方、「no more than」と言えば、「~よりぜんっぜん多くない」=「~っぽっちしかない」という、本人の気持ち、感情が込められるんです。

「more」という肯定のワードを「no」という強い否定で打ち消しているので、「~より多いの反対だよ!」と否定的な気持ちで使っているのです。 この違い、よく理解しておいてください。

尚、「no less than」も同じです。

「less」という否定の単語を、「no」で打ち消しているため、「~より少ないなんて事ないよ」と、満たされた肯定の気持ちになるのです。

「no」という単語を使ったとき、気持ちがどう動いているのか、お分かりいただけましたか? では、続きにもどりましょう。

「not less than」は「~より少なくない」「せいぜい~」

上で説明した「no」と「not」の違いがわかれば、「not less than」が単に「~より少なくない」という事実を述べているだけということは理解できると思います。

The wallet has not less than 10,000 yen.
(財布には、少なくとも1万円はある)

【まとめ】「no more than」など4つの構文

最後に4つの構文の復習していきましょう。 単に、日本語訳だけなぞるのではなく、どうしてそうなるのか、理解できたか確認してみてください。

「no more than」・・「たった~」「ほんの~」「~に過ぎない」=「only」
「no less than」・・「~も」(数や量の強調)=「as many(much)as」、「まさに~」(具体的な何かを強調)
「not more than」・・「~より多くない」「せいぜい」「多くても」=「at most」
「not less than」・・「~より少なくない」「少なくとも」=「at least」

尚、比較級を使った慣用表現には、まだまだ紛らわしいものがあります。 特に「no more(less)~than・・・」を苦手としている人が多いのではないでしょうか?この「鯨の構文」と言われている構文については以下で解説していきます。

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「鯨の構文」なんて、実はとっても簡単だ

比較級を使った表現はたくさんあり、学校でもいろいろ覚えさせられましたね。 特に厄介だったのが、「鯨の構文」と呼ばれる「no more~than・・・」の表現ではなかったでしょうか?

ここではこの、「no more~than・・・」の考え方を、すごーく丁寧に解説し、ずごーく簡単に使えるようになる方法をお伝えします。 これを読んでいただければ、もう「鯨の構文」に悩まされる事もないはず!(っていうか、鯨の事はもう忘れよう)

「no more~than・・・」の本質は「全然違う!」ってこと

受験生必須の「鯨の構文」。
「・・・でないのと同様に~でない」という訳で習ったと思います。

A whale is no more a fish than a hose is (a fish).
(馬が魚ではないように、鯨も魚ではない)

大体こんな風な訳がついてましたよね。

ただ、この(受験時代に暗記した)訳にとらわれていると、「わかったようでわからない」とならないですか?。 この文で一番言いたいのは、「鯨は魚じゃない。全然違うんだよ!」ってこと。大事なのはそこなんです。 馬とか、ほんとどうでもいい。

「じゃぁ、どうしてそうなるのかいな?」ってところを、見ていきましょう。

上の例文を直訳すると「鯨は馬よりも魚ではない」ですね。

この発言をした人は、「ねぇあなた、鯨って魚だと思ってるんでしょ?」って思いがあります。 その上で、こう続けています。

「でもね、あなた、馬は魚だなんて思ってないでしょ?実は、鯨は、馬が魚じゃないのと同じように、魚じゃないのよ」

つまり、「馬が魚だってことはあり得ない」=程度で言えば0%

「0%より上じゃない」って事は、やっぱり0!

すなわち「ありえない」って事です。

「鯨は、馬が魚じゃないってのと同じように、魚じゃないのよ」=「鯨が魚だなんてことは、ありえないのよ。全然違うの!」と、なるわけです。

ご理解いただけたでしょうか?

ここまで理解できれば、この鯨の構文の作り方はとっても簡単です。

尚、「・・・でないのと同様に~でない」の「・・・」には何が来て、「~」には何が来てなんて、いちいち頭で考える必要はありません。

思い出してください、 大事なのは「この文は、何を言いたいのか」ってこと。

この鯨の構文が伝えたい事は「全然違う!」でしたね。

ならば、上の例文で言いたいのは、「鯨は魚じゃない」ってことですよね? 英文にすると以下のようになります。

A whale is no more fish

文章は終わってませんが、ここまでで、「鯨は、全く魚なんかじゃないよ」って気持ちです。もう、ここまでで、必要な事は言っちゃったも同然。 あとの「than」の後は、ほんと何でもいいんです。魚として全くありえないもの(程度0%のもの)を入れちゃえばいいのです。 なんなら、「私」でもいいんです。

A whale is no more fish than I am!
(鯨は、(私が魚じゃないのと同じように、)魚なんかじゃないわよ)

それでは、もう一つ例文を見てみましょう。

He is no more my boyfriend than my grandfather is!
(彼は、私のボーイフレンドなんかじゃないわよ。(うちのじいちゃんが私のボーイフレンドじゃないのと同様にね))

簡単ですね。言いたいのは「彼はボーイフレンドじゃない。全然違う!」ってこと。 「than」以下は絶対にボーイフレンドとして考えられない人(程度0%)を入れればOK。 なんなら、「the cat sitting there」(あそこに座ってる猫)でもいいんです。

鯨とか馬とかなんて忘れて、あなたが「~は全然違う」って思っていることを当てはめて、例文を作ればいいのです。

尚、どうしで「not」ではなく「no」なのかは、上の『「no」と「not」の違い』の項目をご覧ください。

「no less~than・・・」(・・・にちっとも劣らず~、・・・同様~)

「no more~than・・・」が理解できれば、「no less~than・・・」も分かったも同然です。 「no less~than・・・」の「・・・」には「誰の目にも明らかなこと」が入り、「~はそれにちっとも劣らない」と言う意味です。 つまり、「・・・同様~だ」ってことになります。

He is no less brave than Achilles.
(彼は、アキレスに少しも劣らず勇敢だ)

「アキレスと同じように勇敢だ」ってことです。

「no more~than・・・」では、than以下に「絶対にありえない」ってことが入りましたが、「no less~than・・・」では逆。つまり「明らかにそうだ」ってことが入ってます。

上の例文ではギリシアの英雄アキレスの名前を入れましたが、もし、「彼がすっごい勇敢だ」ってことを伝えたいだけなら、than以下は、まぁ、何だっていいんです。

「Spiderman」だって構いません。 要するに、聞き手が「ああ、あの人に劣らず勇敢ってことは、なるほどすごい勇敢だな」ってことが分かればいいんです。

尚、「no less~than・・・」では、than以下に具体的な人やものを入れて、程度の同じさまを表すこともできます。 そのときは、その二つが同じように程度が高いということを強調した表現になります。

例えば、以下のような場面で使えます。

美穂ちゃんに振られちゃった親友をなぐさめるため、亜希子ちゃんを紹介するとします。

Cheer up! Akiko is no less beautiful than Miho.
(元気出せよ。亜希子は美穂に劣らず美人だぜ!)

その他の例文も見てみましょう。

She is no less beautiful than before, because she became old.

この例文を訳す時は注意してください。 もし、この例文を「・・・と同じように~だ」で訳すと、「彼女はかつてと同じように美しい。なぜなら、彼女は年を取ったから」となって、なんのことだかわからなくなってしまいます。

この例文は「年を取ったからといって、彼女の美しさはかつてに比べ少しも劣らない」と解釈しなければなりません。

要するに「かつてと同じ」ってことですが、英文の構造を理解しておかないと、上であげたようなトンチンカンな解釈になってしまいますので注意しましょう。

【まとめ】複雑な比較級の構文

比較級の最難関と言われる「鯨の構文」は頭の中ですっきり理解できましたか? 「no more~than・・・」と「no less~than・・・」を使いこなすには、受験参考書に書いてあるような日本語訳を丸暗記するのではなく、きちんと構文を理解することが大事です。

なので、「この比較級の構文はどうしてこのような意味になるのか」を自分で説明できるようになってください。 できなかったら、もう一度最初から読み直して下さい。

「no more~than・・・」→「・・・同様~ではない」(全然~じゃない!)
「no less~than・・・」→「・・・同様~だ」「・・・に劣らず~だ」

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